初心者の為の居合刀の選び方 〜刀の雑学あれこれ 〜



 居合道に限らず、お稽古事を続ける上で、愛用する品物との出会いもまた楽しみのひとつではないでしょうか。特に、居合道を志す人の多くはもともと刀剣の美しさや精神性などに魅了されて道場の門をたたく人が多いと思われます。
 このページでは、これから居合練習刀を購入する人はもちろん、すでにお持ちの方にもお役に立てるようにとの思いで作成させていただきました。とはいえ筆者もまだまだ修行中の身ゆえ、もしかしたら間違った知識もあるかと思います。何かお気づきの点などございましたらどしどしご意見を頂戴したく存じます。

●「刀」とは?
 一般的に「刀」と呼ばれるものには様々な種類がありますが、大別すると以下のような種類に分けられます
刃渡り2尺(60センチ)以上
脇差 刃渡り1尺(30センチ)〜2尺まで
短刀 刃渡り1尺以下

 厳密には「刀」にも反りや形状により「打刀」・「太刀」・「直刀」などの分類があったり、はたまた「薙刀」や「野太刀」・「長巻」などなど、なんとも形容しがたい様々な形状の刃物も刀に分類されますが…

ひとまずその講釈は専門書に預けまして、

居合道で一口に「刀」(「とう」と呼びます)と言えば、「打刀」(うちがたな)を指すとお考え下さい。
「打刀」とは、テレビの時代劇でよく見かける中反りの普通の形状の刀を思い浮かべていただければそれでほぼ間違いありません。

●居合道で使用する「刀」
  居合道の演武でよく使われる刀にはおおざっぱに分けて3種類あります。

・真剣 歴代の刀匠またはその技術を伝承する古今の作刀家が制作したもので、各都道府県の教育委員会に登録を済ませたもの。
・刃びき刀 真剣の刀身を鈍磨させたもの(切れなくしたもの)。とはいえ全く切れず安全という訳ではありませんし、素材はまぎれもなく和鋼で、若干の研ぎ減りはしますが再び研ぎに出せば鋭利になります。
・模擬刀 真剣に似せた合金製の刀。刀身は亜鉛や真鍮などにメッキ加工したもので研いでも切れない為、登録の必要がない。

 お察しのとおり、真剣は危険度が高く、その所持にも手間と注意を要しますので、たいがいの道場では入門者には模擬刀を薦める場合が多いですが、中には入門から真剣を扱う道場もあります。
 当然、江戸時代には合金製の模擬刀などありませんから、当時は初心者でも真剣しか選択肢は無かったわけで、そう考えるといきなり真剣を持つのもまたひとつアリなのかも知れませんが、とくにそういった指導がないのであれば価格と扱いやすさから見て最初は模擬刀がよろしいかと思われます。
 
 ただし「模擬刀は安いし切れないし錆びないから」と侮ってぞんざいな扱い方をすることはあまりお勧め出来ません。筆者も模擬刀の抜・納刀時にうっかりして指の股に傷を負ってしまった事がありました。金属の塊なのですから人に当たれば“真っ二つ”とはいかないまでも危険であることにかわりはありません。とりわけ切先などが他人様の目に当たっては一生悔やんでも取り返しがつかない事にもなります。刀身の真偽はともかく、安全に十二分の配慮をし、何よりも用いる道具への愛着と、その製作者への敬意をもって扱い、模擬刀と言えども真剣を扱うように大切にすることが上達への道であると筆者は信じております。
 何故なら、縁あって手中にした品物を大切に使い続ける精神こそが現代人が忘れかけた古き良き日本人の美徳であり、そういった美意識を学ぶのが「道」のつくお稽古ごとの本来の楽しみだと思うからです。
 
 茶人にとっての茶器、書家の筆と硯、演奏家の楽器、どれをとっても愛用品を大切に扱うことなく大成した人はおりません。(ライブ中にギターを炎上させて神に近づいた天才ギタリストもおりますが、まあ、異国の話はおいときましょう)

広告ページ

V.ROAD美術刀剣カタログ
 500円

岐阜関刃物工房V.ROD 
楽天ショップ

V.ROADのホームページへ


特製居合刀 28240円
少年用   24240円
時代拵   33360円


武道用品ジーベック 楽天ショップ

武道用品ジーベックの
ホームページへ

イラスト・
写真多数掲載
刀剣ファン待望の書!

<図解>
日本刀辞典


歴史群像編集部
居合道入門セット 
特別価格19600円

武道通販champ楽天ショップ 

champのホームページへ



●自分に合った模擬刀を選ぼう
 このホームページではこれから居合道を始めたい初心者の皆様のための解説をメインにしておりますので、以下は模擬刀に焦点をあてて説明をしてゆきたいと思います。

 まず模擬刀の良いところは何といっても価格が安く、登録も不要なので誰もが入手しやすいことに尽きます。また、真剣とは違って自分好みの刃渡り(刀の刃の部分の寸法)や拵え(刀の外装部分)をオーダーすることも容易です。


 まずは刀の各部位の名前を覚えよう
 ひとくちに「刀」と言いますが、その刀は様々な名前の部位によって成り立っております。専門書をひも解くと本当にびっくりするくらいに細かな名前がびっしりと書かれていますが、その中でも最低限は下図にご紹介する名称だけは覚えておきましょう。
 これらの名前は居合稽古の指導中に何度も出てくる名前ですから、これがチンプンカンプンでは上達の道はありません。また、ご自分の模擬刀をオーダーする上でもこの名前がわからないと業者さんとの意思疎通が難しいかもしれません。

上図は刀身の代表的な各部位の名称です。真剣も模擬刀もこれらの名前に違いはありません。
 左から順番に茎尻(なかごじり)、茎(なかご)、目釘孔(めくぎあな)、刃区(はまち)、棟区(むなまち)、棟(むね)、鎬(しのぎ)、物打(ものうち)、帽子(ぼうし)、切先(きっさき)と言います。

 「茎」は「中心」とも書きます。実用の際には柄の中に収まっている部分で、簡単に抜け落ちないように「目釘孔」という穴に「目釘」という竹や獣骨などを使ったテーパーピンで固定されます。茎の先端部分を「茎尻」といいますが、面白いことに柄に収まると同じような部位を「柄頭」と呼びます。
 
 つまり外装を付けると頭になったり、取り外すとお尻になったりする訳ですね。

 
 ご注意ください!!
 真剣の場合、茎は魅力的な鑑賞ポイントですし、「休め鞘」とも呼ばれる白鞘に刀身を移して保管することもありますから茎を露出させる頻度が高いですが、模擬刀にはそういった必要性がありませんから最初から茎が柄から抜け落ちにくいようにしっかり固定されており、無理に抜くと柄をや刀身を痛めることがありますので、必要も無いのに茎を抜き差しすることは避けた方がよいでしょう。

 
 ちなみに、刀身の寸法を表す「刃渡り」の測り方ですが、ちょうど「刃区」(はまち)から「切先」までの長さがそれにあたります。
 
 次に先端部分の説明ですが、「帽子」とは切先付近の丸みをおびた部分(この丸みを「ふくら」と言います)で、「物打」とはここから手元に向かって約6寸(約18センチ)ほどの部分を言い、ここが刀の実用部分になります。
 刀の運用とは「切先」がブレ無く正確な軌跡を描くことにより「物打」で対象物を斬る事とお考えください。

広告ページ
楽天ブックス
「江戸の短刀拵」

井出正信 著
里文出版
楽天ブックス
「江戸の刀剣拵」

井出正信 著
里文出版
楽天ブックス
鐔・刀装具100選

飯田一雄・蛭田道子 著
淡交社
楽天ブックス
「日本刀辞典」

得能一男 著
光芸出版
楽天ブックス
日本刀図鑑

得能一男 著
光芸出版
コラム
〜刀の表裏のお話〜
あまり気にされることはありませんが刀には表と裏があります。
上の図をみると刀の茎が左側、切先が右側に描かれており、他の絵でも刀を描く場合だいたい普通はこの方向で描かれるのが普通ですが、この絵で描かれている面が刀の表側にあたり「差し表」と言われます。逆にこの裏側を「差し裏」と呼びます。これは、ちょうど刀を左の腰に帯びた時にこの面が体の外側に向く為で、鞘に蒔絵などの装飾を施された刀の場合でも、やはり差し表の方にメインのモチーフをもってくるのが通例となっております。
名刀写し「鬼神丸国重」居合刀
 特別価格37000円

しのびや楽天ショップ

しのびやのホームページへ
セミオーダー肥後拵
 20%OFF!!

武道通販champ楽天ショップ

champのホームページへ



 模擬刀は研いでも切れません。 
 真剣が焼き入れした玉鋼を用いるのに対し、模擬刀は真鍮や亜鉛などの合金にメッキを施したもので、グラインダーを使って人工的な波紋を付けてあります。
 思ったより精巧にできており、一般の人が見ると本物の真剣よりピカピカ光沢があっていかにもソレっぽいので「これ、研いだら切れるんじゃないの?」と言う人もおりますが、研いでもただメッキが剥げるだけです。

●オーダー感覚で楽しめる模擬刀の魅力
 真剣の場合、出回っているのは2尺3寸の定寸もしくはそれ以内の寸法のものが多く、体格の大きな人にはちょっと物足りなかったり、逆に小柄な人にとっても身長に合わせて気軽に寸法を擦り上げる訳にもいかず(価値が下がりますから)、最良の一振りに出会うにはちょっとした運と根気を要しますが、模擬刀の場合はほとんどの専門店が気軽に寸法調整に応じてくれます

 上図は刀の外装部分(「拵-こしらえ-」といいます)の各名称です。
 まず柄(刀の握り部分)の各部位ですが、左から「柄頭」(つかがしら)、「目貫」(めぬき)、「目釘」(めくぎ)、「縁」(ふち)、「切羽」(せっぱ)、「鍔」(つば)、「はばき」と言います。
 「柄頭」と「縁」はひと揃えでデザインを統一するのが基本で、二つを合わせて「縁頭」(ふちがしら)と呼ぶこともあります。
 「目貫」は、古来もともと「目釘」を隠す装飾として生まれましたが、時代とともに用途が変わり、掌の握り易い位置に添えられることで、手溜まりを良くするための金具として用いられるようになりました。「縁」と「頭」をまとめて「縁頭」と呼ぶように、「目貫」は「笄」と「小柄」(ともに鞘に取り付けられる)と合わせて「三所物」(みところもの)と呼びますが、居合用の模擬刀では演武の邪魔にしかなりませんので笄と小柄はついておりません。
 
 次に鞘の各部位の名称ですが、左から「鯉口」(こいくち)、「栗形」(くりかた)、「下緒」(さげお)、「鐺」(こじり)と言います。上記の「小柄」や「笄」もそうですが、真剣にあって模擬刀には取り付けられない物として他にも「返り角」という部位があります。これは鞘の中ほどにつく突起物で、鞘が抜け落ちるのを防ぐものですが、これも演武をする上では鞘送りの邪魔になるため居合用の模擬刀には付けられておりません。

 真剣は鍛造品、模擬刀は鋳造品
 一口に真剣と模擬刀の違いを言えば「切れない錆びない」と言うことですが、製法という観点から見ても両者は全く違う方法で製造されております。
 まず真剣はご存じのとおり鍛造と言われる製造方法で、熱した金属を叩いて成形したものです。もちろん刀身はその代表的な例で、鍛造の中でも「折り返し鍛練」と呼ばれるような、たいへん手間のかかる方法で作られています。また、刀身ほどではありませんが、真剣の拵は鍔や縁頭・はばきに至るまで金属で出来ている部品のほとんどが鍛造品です。
 それに対し、模擬刀は刀身をはじめほとんどの金属部品が鋳造品でできています。鋳造とは、溶けた金属を砂でできた鋳型に流し込んで成形する技術で、鍛造とは全く違う製法です。鍛造は日本刀のように一品づつのオーダー生産に向き、量産に向かない為たいへんコスト面でも高価な製造方法ですが、分子構造が密でたいへん強固な金属を作ることができます。逆に鋳造品は同じ原型からいくつもの量産品を大量生産することができますが、分子構造が鍛造品に比べて弱く、強度が低いという短所をもっています。


●初心者の為の刀の選び方
 ―模擬刀は長さとバランスが重要です―
 初心者にとって刃渡りの長さや重量のバランスは特に重要で、これらが整ってないと上達の速度にも影響します。参考までに体格に合った刃渡りの目安を下の表にまとめてみました。
 ちなみに武士の時代は2尺3寸が定寸とされていたそうです。
 ただし表はあくまで一説による目安で、すべての人がそうでなければならないという決まりはありません。

身長に応じた刃渡りの適正な寸法の目安
身長(単位:p) 刃渡り(1寸=約3p、1尺=約30p)
150〜160 2尺2寸〜2尺3寸
160〜170 2尺3寸〜2尺4寸
170〜175 2尺4寸〜2尺5寸
175〜 2尺5寸〜

 次に刀のバランスですが、これは刀身の長さ・身幅・厚みと鍔の重さや柄の長さなどの兼ね合いで調整することができます。
俗に手元に重心のある状態を「手元調子」とか「腰調子」といい、鍔の重量を重くしたり柄の寸法を長くするとこの状態になります。逆に先端に重心のある状態を「切先調子」とか「先調子」と呼びます。 
 
 手元付近に重心のある刀は刀のコントロールが容易で振り易いかわりに「手元斬り」(刀の回転半径が小さく技が貧弱に見える)になる傾向があり、逆に先端付近に重心のある刀は切っ先のトップスピードが上がって豪快に見えるかわりに技の決め所で切っ先が流れたりぶれたりします。
 極端な手元調子や切先調子など、あまりにも身体に馴染まない刀を無理やり使っていると技の上達はおろか手首や腰などの故障の原因にもなりますので注意が必要です。


とりあえずこのページでの講釈はここまでといたしましょう。
さらに深く楽しみたい御仁は次のページ「拵えの楽しみ」にお進みください。

→次のページへすすむ
→前のページに戻る
→トップページに戻る
諏訪工芸の商品紹介

模造刀「和泉守兼定」掛け台付き 12000円
(鑑賞用につき居合には適しません)

「小豆長光」太刀拵 60000円

(鑑賞用につき居合には適しません)

刀剣お手入れセット 
2000円

等身大鎧兜 18万〜
諏訪工芸のホームページへジャンプ